多機能性を付与したスギ内装材の開発( 第4報)
- 草木染め塗装の耐水性向上と混色-
大野善隆
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・豊田修身
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・山本幸雄
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・兵頭敬一郎
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日田産業工芸試験所
・
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産業デザイン担当
Dev el opm
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ul t i f unc t i on ( 4t h Repor t )
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Dyeing Plants Painting to Improve Water Resistance and Mix Colors
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Hi t a I ndus t r i al Ar t Res ear c h Di vi s i on
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I ndus t r i al Des i gn Di vi s i on
要
旨
草木染め着色塗装製品の中に,着色剤が水に溶脱しやすいものが含まれていることが判明した.そこで,耐水性 試験により植物染料,媒染剤,溶解剤,油性自然系塗料等の影響を明らかにするとともに,耐水性を向上させる着 色方法や塗装処理を検討した.さらに,耐水性が良好な茶系3原色(黄色,赤色,黒色)を基にし,色表現の拡大を 目的とした茶系混色を試みた.その結果,耐水性は自然塗料を塗布した場合,塗料の種類や媒染剤の有無より異な るとともに溶解剤を混入しないことで向上することが分かった.また,上塗りでウレタン塗料を用いるか,或いは 全てウレタン塗料を用いれば,十分な耐水性を確保できることが分かった.茶系混色では,鉄媒染の濃度を調整す ることでバランスが良い混色が可能となることが分かった.
1.
はじめに
昨年度,スギ材の草木染めとして,色の発色や安定性 の良い染織用市販植物染料のラックダイやロックウッド と金属塩媒染剤5種の組み合わせからなる染色液をスギ 材に塗布し,発色の違いや染色性と色の安定性との関係 について検討した.ラックダイやロックウッド染液によ る着色は媒染剤との組合せにより,発色が異なること, 一部は,木工用に市販されている染料や顔料の着色剤と 同程度の色の安定性を示すものがあり,これらはスギ内 装材に充分利用可能な着色であることが分かった.
1 )
その後,草木染め着色塗装製品の中に,着色剤が水に 溶脱しやすいものが含まれていることが判明した.そこ で,耐水性試験により植物染料,媒染剤,溶解剤,油性 自然系塗料等の影響を明らかにするとともに,耐水性を 向上させる着色方法や塗装処理を検討した.さらに,耐 水 性 が 良 好な茶系3原色(黄色,赤色,黒色)を基にし, 色表現の拡大を目的とした茶系混色を試みたので報告す る.
2.
実験方法
2. 1 草木染め塗装の耐水性向上
まず,耐水性の良好な自然塗料を選定するために,供 試木材に植物染料と金属媒染剤との組み合わせによる着 色剤を塗布し,その後,自然塗料と比較汎用塗料とを塗
布した試料を作製し,耐水性試験に供した.
次に,耐水性を向上させる塗装処理や着色方法を探索 するために,植物染料の着色後にセラックニスやウレタ ンオイルで捨て塗りした試料と,植物染料と水性自然塗 料とを混合したもので着色した試料とを作製し,耐水性 試験に供した.
また,植物染料に混合する溶解剤が耐水性に与える影 響を把握するために,着色剤に溶解剤を混合しない試料 を作製し,耐水性試験に供した.
2. 1. 1 試料の作製
スギ材(赤太,白太,寸法:70mm× 150mm× 10mm)を 超仕上げ研削後,ワイドベルトサンダー(研磨紙#240 )で素地調整したものを供試木材とした.
( a) 自然塗料を塗布した試料
蒸留水に市販の植物染料(ラックダイ,ロックウッド : T社)と金属塩媒染剤(錫液,アルミ液,銅液,チタン 液,鉄液: T社)と染料溶解剤(T社)を10%濃度に混合 調整した染液を供試木材に刷毛で1回塗布した.24時間 乾燥後,その上に,市販自然塗料(5種:4社)を塗料メ ーカーの標準仕様に準じ,下塗り,中塗り,上塗りの順 で3回塗布(刷毛塗り→拭き取り)したものを試料(E, C,A,L,O,E- U)とした.E- Uは,Eの特別仕様で上塗 りのみ専用ウレタン塗料をスプレー塗装したもの.各塗 料の乾燥時間は24時間とした.
大分県産業科学技術センター 平成19年度 研究報告
( b) 比較汎用塗料を塗布した試料
( a) と同様に染液の着色後に,市販ウレタン塗料(1 種:U社)を下塗り,上塗りの順でスプレー塗布し,比 較汎用塗料を塗布したものを試料(U)とした.
( c ) 植物染料の着色後に捨て塗りした試料
( a) と同様に染液の着色後に,捨て塗りとしてセラッ クニス(1種:B社)やウレタンオイル(1種:K社)を塗 布し,24時間乾燥後,その上に,市販自然塗料(E)を 中塗り,上塗りの順で2回塗布(刷毛塗り→拭き取り) したものを試料(S- E, O- E)とした.
( d) 植物染料と水性自然塗料とを混合した試料 市販水性自然塗料(2種:A社)に植物染料と金属塩媒 染剤と染料溶解剤を10%濃度に混合調整した塗料を供試 木材に刷毛で1回塗布した.24時間乾燥後,その上に, 同種の水性自然塗料を1回塗布したものを試料(W1, W2)とした.
( e) 着色剤に溶解剤を混合しない試料
( a) と同様に,溶解剤を混合しない染液を塗布し,自 然塗料(E)を塗布したものを試料とした.
2. 1. 2 耐水性試験
耐水試験は,J I S A 1531: 1998( I SO 4211: 1979) 家具 の常温液体に対する表面抵抗試験に準じて行った.使用 した試験液は蒸留水で,試験片に試験液を接触させる試 験時間は1,6,24時間とした.
2. 2 草木染め塗装の茶系混色
まず,黄色,赤色,黒色の3色からなる茶系混色の試 料を作製したが,染料と同濃度の鉄媒染剤を使用したた め,鉄媒染剤を混入したものは黒色に偏ったので,次に 鉄媒染剤の濃度を減量調整した試料を作製した.
2. 2. 1 試料の作製
スギ材(柾目: 赤太,白太,寸法:50mm× 50mm× 10mm)を超仕上げ研削後,ワイドベルトサンダー(研磨 紙#240)で素地調整したものを供試木材とした.
( a) 3色による混色試料
2. 1. 1( a) と同様に,5%濃度の黄色:ロックウッド- 媒 染無( RW- BR) ,赤色:ラックダイ- 媒染無( RD- BR) ,黒 色:ロックウッド- 鉄媒染( RW- Fe) の3色を用いて,20%刻 みで調合した21色の染液と,市販自然塗料(E)とで試 料を作製した.
( b) 鉄媒染濃度を減量調整した混色試料
( a) と同様に,5%濃度の黄色:ロックウッド- 媒染無 ( RW- BR) ,赤色:ラックダイ- 媒染無( RD- BR) の2色を用い て,20%刻みで調合した6色の染液に,鉄媒染剤(1,0. 5, 0. 25, 0. 1, 0. 05, 0%)を加えて調合した36色の染液と, 市販自然塗料(E)とで試料を作製した.
2. 2. 2 測色方法
分 光 測 色 計 ( ミ ノ ルタ製:CM- 508d)で試料を測色し, CIEL*a*b*表色系の色度図で表示するとともに,色差 ⊿E*ab等を求めた.
3.
結果及び考察
3. 1 草木染め着色塗装の耐水性向上 3. 1. 1 塗料の違いによる耐水性への影響
塗料の違いによる耐水性への影響(1時間)をFi g. 1に 示 す . 耐水性試験の評価値は,自然塗料の場合E,C,A, L,Oの順に評価値が下がった.これは塗料中の油脂,樹 脂 , WAXな ど の成分組成等が影響していると考えられる. また,媒染剤の有無や種類によって異なり,媒染無,鉄 媒染,銅媒染,アルミ媒染,錫媒染,チタン媒染の順に 評価値が下がった.これは,染料と媒染剤との化学反応 等が木材への吸着力に影響していると考えられる.E- U とUの評価値はともに,1,6,24時間いずれにおいても 評価値5で,上塗りでウレタン塗料を用いるか,或いは 全てウレタン塗料を用いれば,十分な耐水性を確保でき ることが分かった.
3. 1. 2 耐水性の経時変化
ウレタン塗料を使用したものを除いた試料の中で,最 も良好なE塗料の耐水性の経時変化をFi g. 2に示す. Fi g. 1と同様に媒染剤の有無や種類によって異なり,媒 染無,鉄媒染,銅媒染,アルミ媒染,錫媒染,チタン媒 染の順に評価値が下がった.また,時間経過とともに若
Fi g. 1 塗 料 の 違 い に よ る 耐 水 性 へ の 影 響 ( 1 時
0 1 2 3 4 5
E C A L O E - U U
塗 料
評
価
値
B R - B R
R D- B R
R D- S n
R D- A l
R D- C u
R D- T i
R D- F e
R W- B R
R W- S n
R W- A l
R W- C u
R W- T i
R W- F e 染 料 − 媒 染
Fi g. 2 耐水性の経時変化(E 塗料)
0 1 2 3 4 5
B R
-B R R
D-B R R
D-S n R
D-A l R
D-C u R
D-T i R
D-F e R
W-B R R
W-S n R
W-A l R
W-C u R
W-T i R
W-F e
着 色 剤
評
価
値
1H
6H
24H 大分県産業科学技術センター 平成19年度 研究報告
干下がった.RD- BR( ラックダイ- 媒染無:赤色) ,RW- BR( ロックウッド- 媒染無:黄色) ,RW- Fe( ロックウッド- 鉄 媒染:黒色) の3色は,食事時間程度の1時間で変化が認 められない評価値5,仕事時間程度の6時間でわずかな 変化が認められる評価値4におさまることから,これら はテーブル天板等に使用できるものと考えられる.
3. 1. 3 耐水性を向上させる塗装処理や着色方法によ る耐水性への影響
耐水性を向上させる塗装処理や着色方法による耐水性 の影響をFi g. 3に示す.セラックニスやウレタンオイル による捨て塗り塗装処理と,植物染料と水性自然塗料と を混合した着色方法のいずれにおいても,Fi g. 1のEを越 える耐水性を得ることができなかった.また,乾燥時間 が遅延するなど作業性にも悪影響を及ぼした.
3. 1. 4 溶解剤による耐水性の影響
溶解剤による耐水性の影響(1時間)をFi g. 4に示す. おおむね溶解剤を混入しないことで耐水性が向上するこ とが分かった.また,評価値が5となったRD- Al (ラック ダイ- アルミ媒染:赤紫色), RW- Sn(ロックウッド- 錫 媒染:紫色), RW- Cu(ロックウッド- 銅媒染:緑色)な どは,テーブル天板等に使用できるものと考えられる.
3. 2 草木染め塗装の茶系混色
3. 2. 1 3色による混色
3色による混色の画像をFi g. 5,色度図(L*a*b*)を Fi g. 6に示す.A群に隣接するB群の試料間の色差(⊿ E*ab)は最大38,最小16,平均24,隣接するB群同士の 試料間の色差は最大11, 最小1, 平均5で,鉄媒染剤を混入 していないA群(明るい黄色∼赤色,L*:71∼59,a*: 11 ∼19,b*: 46∼24)と,混入したB群(暗い茶色,L*:52 ∼43,a*: 6∼2,b*: 21∼9)に偏った.B群が暗い茶色
Fi g. 3 耐水性を向上させる着色方法や塗装処理に
よる耐水性への影響( 1 時間)
0 1 2 3 4 5
S - E O- E W1 W2
塗 料
評
価
値
B R - BR
R D- BR
R D- S n
R D- A l
R D- C u
R D- T i
R D- F e
R W- B R
R W- S n
R W- A l
R W- C u
R W- T i
R W- F e 染 料 − 媒 染
黄色%
赤色% 100
80
60
40
20
0
Fi g. 5 3色による混色の画像 黒色%
0
100 80
60 40
20 100 80 60 40 20 0
B 群 A 群
Fi g. 6 3色による混色の色度図(L*a*b*) A 群
B 群
B 群 A 群
a*
R D -S
n
R D -A
l
R D -C
u
R D -T
i
R D -F
e
R W
-S n
R W
-A l
R W
-C u
R W
-T i
R W
-F e
0 1 2 3 4 5
評
価
値
着 色 剤
媒 染 入 媒 染 無
Fi g. 4 溶解剤による耐水性への影響( 1 時間)
染 料 媒 染
大分県産業科学技術センター 平成19年度 研究報告
に偏ったのは,鉄媒染剤を過剰に混合したためと考えら れる.
3. 2. 2 鉄媒染濃度を調整した混色
鉄媒染濃度を調整した混色の画像をFi g. 7,色度図( L*a*b*)をFi g. 8に示す.隣接する試料間の色差は最大 14, 最小1, 平均6で,鉄媒染剤を混入していないA群(明 るい黄色∼赤色,L*:73∼55,a*: 10∼19,b*: 48∼23), 1%混入したB群(暗い茶色,L*:56∼43,a*: 9∼2, b*: 24∼11),0. 5∼0. 05%混入したC群(茶色,L*:63 ∼49,a*: 16∼4,b*: 39∼17)となり,鉄媒染濃度を 0. 05∼1%に調整することでバランスが良い混色が可能 となることが分かった.
4.
まとめ
( 1) 耐水性は自然塗料を塗布した場合,塗料の種類や媒 染剤の有無より異なるとともに溶解剤を混入しないこと で向上することが分かった.また,上塗りでウレタン塗 料を用いるか,或いは全てウレタン塗料を用いれば,十 分な耐水性を確保できることが分かった.
( 2) 黄色(ロックウッド- 媒染無),赤色(ラックダイ-媒染無),黒色(ロックウッド- 鉄媒染)の3色を用いた 茶系混色では,鉄媒染の濃度を調整することでバランス が良い混色が可能となることが分かった.
参考文献
1)大野善隆:大分県産業科学技術センター平成18年度 研究報告(2006)
鉄媒染% 黄色%
赤色% 100 0
80 20
60 40
40 60
20 80
0 100
0 0. 05 0. 1 0. 25 0. 5 1
Fi g. 7 鉄 媒 染 濃 度 を 調 整 し た 混 色 の 画
A 群 C 群 B 群
Fi g. 8 鉄媒染濃度を調整した混色の色度図(L*a*b*) B 群
A 群
C 群
C 群
B 群 A 群
a* 大分県産業科学技術センター 平成19年度 研究報告